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15話 会長室で

last update Dernière mise à jour: 2025-10-13 19:05:44

翌朝、子供たちを会社にある保育施設に送り、出社する。入り口で社員証をかざそうとした時だった。

「峰月さん」

そう声を掛けられて振り向く。そこには関会長の秘書の泉崎(せんざき)さんが居た。

「泉崎さん」

私は泉崎さんに向き合い、お辞儀する。

「おはようございます」

そう言うと泉崎さんが微笑む。

「おはようございます」

泉崎さんは私に先に行くように促し、先を譲ってくれる。

「どうかされましたか?」

そう聞くと泉崎さんが笑う。

「関会長が峰月さんをお待ちするようにと」

そう言って私をまるでエスコートするように歩く。

「関会長が私を?」

そう聞くと泉崎さんが微笑む。

「はい」

(どうして関会長の秘書の泉崎さんを寄越したんだろう?)

そう思いながら私はエレベーターホールまで来る。

「こちらへどうぞ」

そう促されたのは役員しか乗る事の出来ないエレベーターだ。泉崎さんはICチップの入った専用カードをかざして、エレベーターの扉を開く。

会長室まで案内され、中に入ると関会長が立ち上がる。会長のすぐ近くには数人の役員まで居る。

「峰月くん」

私は会長に挨拶する。

「おはようございます、関会長」

そう言うと関会長が微笑む。

「あぁ、おはよう」

関会長はそう言って私に椅子を勧めてくれる。その椅子に座る前に私は手に持っていた袋を会長に差し出す。

「あの、会長。昨日はありがとうございました。これはほんのお礼です」

会長は私が差し出した袋を受け取ろうとしたけれど、その間に手を挿し込んで来た人が居た。私の所属している部署の部長である西住(にしずみ)部長だった。西住部長は私の手から袋をひったくると言う。

「会長、何が入っているか、分かりません。まずは私が確認を……」

そこまで言った時、関会長が言う。

「泉崎」

名を呼ばれた泉崎さんが西住部長からその袋を取り上げる。そして袋を会長に渡す。

「会長……ですがこんな一介の平社員が持って来たものを……」

西住部長がそこまで言った時には、関会長は袋を開けていた。

「おぉ!これは……!」

そう言って関会長は袋から私が昨日の夜、桃李と作った小さなボール状の上げ菓子を取り出す。それを見た西住部長が私を見て言う。

「君!会長にこんな物を作って来たというのか!しかも手作りか?会長の身に何かあったら……」

そう言った時にはもう関会長はそれを口に放り込んでいた。

「会長!
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